What's Saiseikenkyukai
町家とは何か。人々は自明のことと思っているかも知れないが、そのコンセプトは一人一人みな違うであろう。
京町家について言えば、街路に沿ってほぼ均等に分割された敷地に建て並べられた店舗付住宅が大部分であり、よく似た構造と様式とを持ちながらそれぞれの個性を生かして調和のある洗練された美を示す町並みを造り出した、ある時代に完成された建築または建築群を指すもの、というのがおおよその共通認識であろう。
これは平等と連帯と繁栄をめざした市民性の産物であって、封建的制約の下で時代と地域とに見事に適応した商業社会の具体例として貴重なものであった。
しかし今は自由競争の世の中となり、価値観は文化より経済が優先し市民性から平等と連帯が失われて、他人を押しのけることと個人権利の拡張要求とがこれに取って替わった。
つまりかつて町家を成立させた市民性は消滅して、古くも新しくも町家というものの本質はなくなってしまっているのである。
次に、再生ということについて考えてみよう。
一つは建築形式や技術という目に見えるもの、今一つは町家の存在を支える精神的基盤あるいは社会的環境といったものが対象となるだろう。いずれも「伝統」というキーワードが重きをなす。
伝統を守る、とはよく言われるけども伝統とは継承されるものである。
伝統というのは時間的経過の各時点における文化の歴史的集積を指しており、継承というのは過去に現在を加えて未来に残すことである。前代がそのまま次代に伝えられるのではなく、現代に適応する何物かが加えられ活性化されたものが次代に受けつがれることによって伝統は生き延びる。
したがって、いま伝統といわれているものに何を加えるべきかが、これを重んじ未来に伝えようとする際の第一の問題点となるのである。
時として伝統など考慮したこともない人々の活動が図らずも伝統に新たな遺産を加えることがありうるし、またあまりに伝統にこだわる余り期せずしてこれを死物化してしまう場合もあるだろう。
再生というのは、このような伝統の精髄を提示することとその正しい継承のあり方を教えるという意義をもつものと考えられる。それゆえ、これは現在社会への適応という問題の解決ぬきにはあり得ないし、それも人寄せや営業的効果をねらった形だけの保存などでないことは明らかである。
今さしあたって我々の当面する問題は、なお残存する個々の町家に対して迫りつつある変貌への圧力をどう受けとめどう解決すれば最善であるかという答えを探ることであろうと思う。
個々の場合の条件はことごとく異なっており、共通の答えなどはあり得ないが、その考え方には一本の筋が通っていないと、解答は信条によらず心情による場当りのものとなってしまい、結局次代に何の価値も残すことができない。
現在、世界的に経済性追求の減速が見られ、競争よりも共存の理念が求められている。数多くの地域における血まみれの民族紛争も共存に到る困難な道程の苦闘のあらわれであるとも言える。この時にあって市民性における平等と連帯の復活が期待できないだろうか。
また、地球規模の環境保護運動のスローガンの一つに「持続可能性」というのがある。我々人間の居住環境である都市においても持続可能性が求められるようになるだろう。そしてそれは共存の市民性が復帰することによって達せられる。
京都を訪れる人々が、古都のたたずまいの中に自己のアイデンティティのルーツを見出すのは当然であるけれども、このたたずまいが単なる形骸と化してはなんの価値もない。現代への適応という変貌をなしつつ横溢する活力を持続する中で、人々が現在の日本人としてのアイデンティティを確かめうるような、市民共存の理念による独自の都市環境を造り出したとき、それが新しい形式をもつか伝統の継承を重視するかにかかわらず、本質的な町家の再生が達成されたというべきであろう。
1995~
1996
平成7~8年
当時、京都市が把握していなかった京町家の実数、老朽化などの実態を明らかにした。その後、京都市による京町家まちづくり調査(1998年)につながり、現在公表されている町家残存率などのデータベースの基礎となっている。また、京町家を主体としたまちづくりプランにも反映された。
1997
平成9年
1998
平成10年
1999
平成11年
2001
平成13年
4会で「京町家ネット」を形成、ホームページや京町家通信(隔月発行)を中心として情報発信をおこなってきた(2019年3月まで)。
2002
平成14年
2004
平成16年
2005
平成17年
全国各地で町家再生に従事する組織を集め、初めて京都市で開催。2017年(平成19)には第2回を開催、以後は開催時に形成したネットワークにより全国に展開することになった。
2010
平成22年
改修された京町家は、釜座町の会所として機能するだけではなく、改修再生の実際を伝えるモデルハウスとして、また、京町家の伝統や豊かな暮らしの文化を伝え、地域の次世代の担い手を育成するため、普及・啓発活動拠点として機能している。 その後、ワールド・モニュメント財団の支援による再生プロジェクトを2件実現し、合計約58万ドルの支援を得た。
2012
平成24年
2012
平成24年
2015
平成27年
明倫学区地域景観づくり協議会の発足に伴い、オブザーバーとして意見交換会に参加するなど、地域のまちづくりに協力。2017年(平成29)には「明倫ルールブック」の作成を支援した。
2017
平成29年
ワールド・モニュメント財団より合計約58万ドルの支援を得た。
2017
平成29年
京町家改修に携わる若手設計者の育成。2018年度第2期開催。
2018
平成30年
2018
平成30年
文化庁伝統文化親子教室事業の支援を得て、京町家の生活文化を親子で学び、楽しむ講座全7回を実施。2019年度第2期開催。