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1月例会「 経済学の観点から京町家の未来を考える〜空中権などに向けて〜」報告

日 時 :2025年1月11日(土) 14:00~16:00
会 場 :京都市景観・まちづくりセンター ワークショップルーム2
講 師 :寺崎友芳 (京都産業大学経済学部教授)
参加者 :23名

2024年12月のシンポジウムでコメンテータを務めてくださった寺崎先生をお招きして、経済学の観点からじっくりとお話を伺いました。シンポジウム登壇者や京都市関係者をはじめ、多くの方々にお集まりいただきました。


まず、主に都市景観を対象とした場合の、経済学における考え方を丁寧に解説していただきました。市場原理に基づけば、社会的厚生が最大になるように最適な資源配分がなされるはずなのですが、実際にはうまくいかない、いわゆる市場の失敗が生じます。それらの事象を要因とともに分析し、どのような解決法があるのか、ご説明いただきました。日頃、経済学とは縁遠い参加者にも、都市景観に当てはめた具体的な事例や解説により、理解を深めることができました。


対策としては、主に直接規制と税金・補助金という2つの手法で解決がはかられています。周囲にマイナスの影響を与えるものにはその分だけ課税することと、周囲にプラスの影響を与えるものにはその分だけ補助することによって社会的厚生を最大化できることや公共財として整備する根拠と事例など、大変参考になりました。都市アメニティ(快適性)についていくつかの手法で景観価値をはかり、分析し、受益者と財源をそれぞれにおいて整理することで、考えられる方策が多様であるとともに、民間にも行政にも地域住民にも、それぞれ役割と可能性があることが強調されました。その上で都市景観において公的部門が介入する根拠が示されたのは心強いお話しでした。


さらに空中権についても、考え方や他都市の事例など豊富に紹介していただきました。ただし、京都で実際に行う場合は、地価が高騰しているといっても東京の比ではなく、京都市内のどこへ移転するのか、など課題が多いこともわかりました。


後半では、シンポジウム登壇者からもコメントが寄せられ、具体的な議論が展開されました。実現となると技術的に難しい面があること、宿泊税などを景観保全に配分する可能性、観光業者に対する課税などいろいろな提案がなされました。
紹介された事例の多くは、寺崎先生が全国各地を訪れて観察されたもので、その膨大な記録が話題となりました。研究室のホームページでも公開されているので、是非ご覧ください。

HP : 寺崎友芳研究室